スロージュエリー・ストーリィ


 ■ アルソミトラ・マクロカルパ

「今度結婚するんですよ・・・」 と、娘さんを連れていらしたお母様。

「パール・ネックレスのひとつを、記念に譲りたい。」 というわけで、

スリムな娘さんのネックラインに合わせ真珠の粒をいくつかはずし、
糸を新しく替えてネックレスを仕立て直します。

母の真珠のネックレスを、結婚する娘に伝える。
よくあるジュエリーのワンシーンです。

そしていくつか外した真珠の粒を見て、

「このまま外したままにしておいても何もならないわ、何かいい考えはないですかね。」 と、
母は無駄にしたくないと思ったのでした。


★ そこで私が考えたスロージュエリー


親から子へ、伝えられる最も大切なもの・・・
それはその「心」ではないだろうか。

母のいろいろな想い、そしてまたそれを感じ取る気持ち、
それを形にすることが、出来ないかと思いました。




アルソミトラ・マクロカルパ
なんだか古代の呪文のようですが・・・

これ実は、東南アジアのジャングルの中、
アルソミトラ・マクロカルパ 巨木にからむ蔦植物の名前です。

数十メートルに育ったところに、
人の頭ぐらいの大きさのひとつの実を結び、熟した後、
下の穴から無数の種が滑空しながら、
はるか遠くまで舞い落ちていきます。

たった1メートルの落下で、横に4メートルも飛びます。

これが空を飛ぶ「グライダー」の原理の元、となったものです。

親の木の近くに落ちれば、同じ環境で安全かとも思えます。
アルソミトラの種 でもその場合、親木に負担がかかることが考えられますし、
何より逆に若芽の成長を妨げることもありえます。

またアルソミトラの種は、遠く何百メートルも飛行するわけですから、
未知の場所に舞い降ります。

そこには親も知らない、たくさんの試練が、
待ち構えているかもしれません。

ほら、結婚する娘さんと、母との心情に似ていませんか?

遠い場所が逆に、とても快適な環境ならば、
親をも超える成長を遂げるかもしれない・・・
いずれにしても、どんな苦難も乗り越えて、
無事に育っていってほしいのが、親の心というものです。
デザインイメージ1
親木も見知らぬ遠くに飛んで行き、そこに根を張る。
アルソミトラ・マクロカルパはまさに、

人間の母と娘の想いと、あい通ずるものがあると思いました。


そこで私は、デザインテーマを、

母から伝える、「心の種」 というものにしました。





種というと、どんぐりのような感じや、
スイカなど果物の種を思い浮かべたりしますが、
このアルソミトラのように、はるか上空から舞い落ちてくる種、
というイメージに絞り込んでみたのです。

ツクバネの種
 これは、ビャクダンの仲間で、ツクバネという木の種です。

 真珠の粒の上にいくつかの羽がある、ペンダント。


          デザインイメージ2        デザインイメージ3


これらのイメージですすめることにしました。

そして、デザインは、お母様と選び、
デザイン完成
このように決まりました。

母の心を詰め込んだ、真珠の粒に、
空を舞う羽をつけたモチーフのペンダント・デザイン。

娘さんに贈る、人生のもっとも大きな節目に、
ふさわしいものとなったはずです。

後日、完成したペンダントを見たお二人には、それはそれは感動していただきました。

完成!

母:「すごいすごい!とてもいいわね、しばらく私が使うわね!」

娘:「え〜!何それ!」

母:「いいでしょ、結局後であなたのものになるんですから・・!」(笑)






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